最強のアドバイザー

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 次の週、店を建ててくれている人達の数が増えていた。 「マリウスさんが早く住みたいだろうから、建てるのを急いで欲しいといわれたんですよ。寮じゃ、レシピの思案や沢山作ることが出来ないからって」 「あ、ありがとうございます。ご迷惑おかけします」  恐縮しつつ頭を下げると、大工の棟梁は、「いつも美味しい差し入れもらって、喜んでるんだよ。お店ができたら、常連になること間違いなしだよ」と笑って、僕の肩を叩いた。  聞いてなかったけれど、寮に来たことで調理がしにくいと思ったのだろう。確かに、週末実家に帰って、レシピを考案したりしているけれど、エルフラン様との打ち合わせも増えているから時間がなくて、気遣いがありがたかった。 「打ち合わせもしやすいからね」  店の二階に部屋を作っていたから、そこに僕が住むと思っていたのに、先に出来たのは隣の家だった。同じ色合いの家が建っているなと、思っていたのだけど、まさか自分の家だったとは――。 「勝手に間取りとか決めてごめんね」 「いえ、僕は建築とか設計とか全然わからないので……」  調理場は、全て僕がやりやすいように決めさせてくれたから、問題はない。大きいのと、少し小さいのを二つ図案に書き出したのは、何故だろうとは思っていたのだけど。二軒分だったとは……。  人が心地よく過ごせる室内作りなんて、僕には想像も出来なかったし。出来上がった家の方も、エルフラン様が好みそうな落ち着いた配色だった。でも、これを全部支払い終わるのは、いつなんだろうか……。多少クラクラしたが、それくらいで落ち込んではいられない。 「あんなに気が置けない友達がいるなんて、知らなかったよ」  寮の住人達のことだろうか。気の置けないというより、図々しいだけの人達なんだけど。 「寮なんて、あんなものですよ」  エルフラン様達が通っていた頃とは、違うのかも知れない。まぁ寮もいくつかあって、僕の住んでいるのは、中の中あたりのランクだ。 「うかうかしていられない」  何が? と聞こうとしたときには、エルフラン様は頭領と話すために歩き出していた。
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