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「し、失礼しました……」
「あの、友達が、弟が攫われたって、行ったんです! 助けてください」
この人なら、僕のいうことを信じてくれるような気がした。
「わかった。安心していい」
僕の髪の毛をクシャっと掻き混ぜて、言葉をくれた。その人は、すぐに警邏隊を引き連れて走って行った。
「ここは危ないからね。もう帰りなさい。子供達は、保護されたら孤児院に入ることになると思うよ」
小さな背の、多分徽章からみたら格上のおじさんが、そう言って僕を安全な道まで送ってくれた。
「あの、子供……達、バラバラになるのが不安なんです。だから、危ないとわかっていても孤児院に行けないって言ってました……」
「そうだったのか……。あの子達は、あまり私たちに心を開いて話してくれないからね。理由がわかってよかったよ。全員は無理だと思うけど、配慮するように頼んでおくよ」
「あ、ありがとうございます。あの、これ。子供達に持ってきたんです。渡してもらえますか?」
拾ってくれた紙袋の中身は、踏み潰された物以外綺麗だった。
「いいよ。美味しそうだ。エルフラン様と私に一つずつもらってもいいかな?」
「はい。沢山あるので、どうぞ」
「ありがとう」
僕が、お礼を言いたい。きっと、エルフラン様は、(何だか名前を呼ぶのは恐れ多いけど)、ロブ達を助けてくれるだろう。
そして、一週間後、行った先の孤児院で、ロブに出会えた。
「お前が言ってくれたんだな。アンリが攫われたことも、皆が一緒にいたいってことも……ありがとうな。俺さ、成人したら警邏隊に入ろうと思ってる。だから今、字を勉強してるんだよ」
「凄い!」
「いや、まだ名前とかしか書けないんだけどな。助けてくれた人達、すっごい心配してくれてた。そんで、大人とやり合ってた俺を見て、俺にぴったりだから、頑張れって言ってくれたんだ」
ロブの目に、年相応の輝きがあった。顔は、あざだらけだったけれど、これは家族を守った勲章なのだろう。
夢を見つけた彼を、うらやましいと思った。僕には、趣味の他には何もなかったから。命をかけて守りたいものも、夢だって――。
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