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「わぁ。エルフラン様だ……」
「どうして、マリウスの部屋に? え、恋人とか?」
「うるさい! うるさい! 食べたいなら静かにしろ!」
僕の両隣と前の部屋の住人は、僕がたまにお菓子をご馳走するから、味をしめて勝手にやってくることがあるのだ。
「エルフラン様」
このまま帰したら、寮中にエルフラン様がいることがバレるだろう。「マリウスがいいなら、一緒でいいよ」
「ありがとうございます!」
三人には、小さいハンバーグを。エルフラン様には、大きくて形のいい、ちょうどいい焼け具合のものを出した。パンは食堂で焼かせてもらったものだ。。
「こんな有名人と知り合いだったんだな、マリウス。いつも地味なのに。明らかにハンバーグに差が……」
「マリウスね、いい子ですよ。結構しっかりしているし、真面目だから浮気もしないですよ。ソースの量も全然違う……」
「美味しいお菓子作ってくれるし。優しいとこもありますよ。飲み物はくれないの?」
僕を褒めつつ文句を言いながら、アピールしてくれている。
「エルフラン様とは、そんなんじゃないから!」
僕は、エルフラン様に申し訳なくて、三人に叫んだ。これ以上、恥の上塗りをしたくない。
「マリウスは、真面目だし、優しいし、これ以上ないくらいの人物だ」
エルフラン様は、僕が恥をかかないようにと、そんな言葉をくれた。
「うわ、マリウス。真っ赤だぞ。ほら、水飲め」
「いいから。大丈夫だから、ほっといてくれ……」
それなのに、僕の心を裏切って、身体は正直だった。真っ赤になった顔を見られないようにと、僕は皆に背を向けて、沢山ハンバーグを焼いた。
「このソース美味しいな」
「うん、毎日でも食べられそう」
「よく来るのか?」
「隣の部屋なんですよ」
エルフラン様は、時折三人と言葉を交わしながら、帰って行った。
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