story 1

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いとおしそうに、愛でるように。 その指先を見て、胸がざわついた。 「主人公のひねくれたところが、またよくて。何て言ったらいいか‥‥」 綾瀬はそう言いながら、俺の原稿を優しく抱き締めた。 大切な大切な、宝物のように。 綾瀬の腕や胸は、とても柔らかそうで、俺の原稿は居心地良さそうに綾瀬の腕の中に収まっている。 何だろう、心臓のあたりが苦々しいような、ふわりと浮き上がったようなこの感じは。 今までに感じたことのない充足感が、体の内側に広がった。 授賞式、総文社との契約、今後の予定のすり合わせ。 それからは、転がるように日々が過ぎていった。 何度も総文社に足を運んだ。 その度に、綾瀬と名乗った編集者を探したが、その後会えることはなく、作品出版の日を迎えた。 自分でもよく分からないけど、あれ以来、重い喪失感に苛まれている。 もう一度、話がしたいのに。 どうしたら貴女に会えますか、綾瀬さん。
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