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彼女は、俺の顔を食い入るように見ている。
「茜田と申します。本日はーーー」
そう名乗った途端、しゃがんで作業していたその書店員が勢いよく立ち上がった。
「初めまして、茜田先生。三洋堂書店の桐原です。今日はよろしくお願いします」
よく通るハキハキとした声が、会場内に響いた。
他の数名のスタッフが、ちらちらとこちらの様子を伺っている。
どこかで、悲鳴のような甲高い声が聞こえた。
声の主はスタッフのひとりだったようだ。
桐原と名乗った書店員が、その声の主の方を一瞥する。
その視線は鋭く、睨まれたスタッフはばつが悪そうに顔を伏せた。
「すみません。では控え室にご案内します」
そう言って大股で歩き出す書店員の後ろを、キョロキョロしながら着いていった。
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