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「あっ、綾瀬さん、俺です」
大きな声を響かせて、圭介は携帯電話に話しかけている。
いきなり電話をかけたことに驚いて、俺はイヤホンを取り落とした。
「あの、また鍋やりましょうよ! 次いつなら大丈夫ですか?」
圭介の行動力に呆れつつも、俺は電話の向こうにいる綾瀬さんのことを想う。
恐らくひどく困っているだろうことは、容易に想像がついた。
綾瀬さんは俺を避けている。
案の定、圭介はすぐに情けない声を出した。
「えーっ。そんなに仕事忙しいんですか‥‥残念です」
圭介は口を曲げて、大袈裟にため息を吐いた。
「綾瀬さん、仕事忙しくて年内は難しいって。忘年会したかったなぁ」
大きな体で、べったりと机の上にもたれ掛かる圭介を、色のない目で眺めた。
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