story 15

12/14
2067人が本棚に入れています
本棚に追加
/472ページ
「あっ、綾瀬さん、俺です」 大きな声を響かせて、圭介は携帯電話に話しかけている。 いきなり電話をかけたことに驚いて、俺はイヤホンを取り落とした。 「あの、また鍋やりましょうよ! 次いつなら大丈夫ですか?」 圭介の行動力に呆れつつも、俺は電話の向こうにいる綾瀬さんのことを想う。 恐らくひどく困っているだろうことは、容易に想像がついた。 綾瀬さんは俺を避けている。 案の定、圭介はすぐに情けない声を出した。 「えーっ。そんなに仕事忙しいんですか‥‥残念です」 圭介は口を曲げて、大袈裟にため息を吐いた。 「綾瀬さん、仕事忙しくて年内は難しいって。忘年会したかったなぁ」 大きな体で、べったりと机の上にもたれ掛かる圭介を、色のない目で眺めた。
/472ページ

最初のコメントを投稿しよう!