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わたしは茜田先生の、担当編集者だから。
先生は学生で、作家で、とっても素敵でかっこよくて。
でもわたしはごくごく平凡な、何の取り柄もない、先生のファンのうちの一人でしかないから。
頭の中の様々な言い訳をすべて投げ出して、その温もりに目を閉じる。
突然、茜田先生がわたしをひょいと抱き上げたので、反射的に小さく悲鳴を上げてしまった。
「先生、重いですよ、わたし‥‥」
決して細くないわたしを抱え、先生は軽々しく立ち上がった。
何てことはない様子で歩き、わたしを奥の部屋のベッドの上に座らせる。
リビングの奥にもうひと部屋あるのは知っていたが、入ったのは初めてだった。
セミダブルのベッド以外は何もない、リビングよりも一回り小さな部屋だった。
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