story X

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売れっ子先生と言えどもまだ大学生。茜田先生の自宅は1DKで、玄関は狭い。 わたしは靴を片方履いたばかりで、これから別の作家さんのお宅に原稿を取りに行かなければならないのだ。 じゃあその予定がなければいいの? と自問自答してみる。 答えはノーだ。 玄関のドアを背に立っているわたしの不安げな顔を、少しイラついたような顔で見下ろす茜田先生。 「その仕事終わって僕のところに帰って来てくれるんなら、離してあげてもいいですけど」 「それは、無理です‥‥本社に原稿を持ち込まないといけないので‥‥」 目を伏せて何か考えるような表情を見せた先生は、小さく息を吐き出して「‥‥分かりました」と言った。 「じゃとりあえず5分でいいです」 「5分って‥‥あの、」 「うん、綾瀬さん、もう黙ってもらえますか」
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