story 23

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あの名刺には、名前と共に、綾瀬さん個人のメールアドレスが並んでいる。 いつも側で俺を助けてくれた、正直で嘘が吐けない、唯一の幼馴染。 圭介は、俺と目を合わせようとしない。 明らかにいつもと違うその様子に、頭痛がして瞼を閉じた。 もっと踏み込んで、確認するべきだと思った。 でも息苦しくなり、逃げるように席を立つ。 「じゃ、また。就活頑張って」 圭介のふわふわとした茶色い髪が僅かに揺れている。俯いたままの彼に向かって、そう言った。 圭介は僅かに顔を上げ、それから苦笑いとともに「お前も」と溢した。 これ以上追及することはできなかった。 震える心臓を抱えたまま、圭介に背を向けて歩き出す。 大事な人を失うかもしれない。 その事がこんなにも怖いなんて知らなかった。 早く貴女に会いたいです、綾瀬さん。
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