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一度そう思うともう止められなくて、守屋先生の原稿に向き合うことも、次第に苦しくなっていった。
ノートパソコンには、柊谷先生から受け取った原稿が映し出されている。
これをプリントアウトして、早く校正をしないと。
そう思うのに、指が動かない。
パソコンの画面を茫然と見つめていると、突然目の前に原稿が落ちてきた。
驚いて顔を上げると、紺色のスーツに身を包んだ水元さんが、厳しい目でわたしのことを見下ろしていた。
腰に手を当てた水元さんのその瞳を、ぼんやりと見返した。
「茜田先生の新作の原稿よ」
水元さんはそう言って、ノートパソコンを塞ぐように置かれたその紙を、目線で指した。
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