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「え……」
わたしは唇から戸惑いを溢し、少し散らかった原稿に視線を落とした。
癖のある茜田先生の字が、隙間なく原稿を埋め尽くしている。
「校正してみなさい」
水元さんのその言葉に、耳を疑った。
「いえ、でも、わたしは……」
ちいさく首を振ったわたしの頬を、水元さんは冷たい指先で柔らかく叩いた。
「最近仕事に身が入ってないでしょう、綾瀬さん」
そう言われ、ぎくりとして顔を伏せた。
いつも自信に満ち溢れていて、堂々としている水元さんがあまりに眩しくて。
今のわたしとは違いすぎて辛かった。
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