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あの後すぐに綾瀬さんを俺のところに呼び寄せて、本当に繋いでおけば良かったと思う。
胸を掻き毟るようなもどかしさに襲われたが、なんとかそれを抑え込んだ。
今書いている小説の校正が終わるまで、その頃には嫌がらせも止んでいるだろうから、と区切りをつけていたが、そんなもの全く意味がないような気がした。
すぐに綾瀬さんに会って、彼女をもう一度俺のものにしないと気が済まない。
この黒々とした焦げ付くような想いは、そうしないと治まりそうになかった。
僅かに痛み始めた頭を片手で抑えながら、総文社の明るい廊下を歩き続ける。
先程の、柔らかい彼女の笑顔が瞼の裏から離れない。
俺以外の男に、そんな風に笑いかけないで、綾瀬さん。
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