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見慣れた社内の廊下を足早に歩いていく茜田先生の背中を、茫然と見送った。
会っていなかった期間は2ヶ月にも満たないのに、以前に先生の部屋で会った時よりも随分と大人びた顔をしていた。
先生は若い。2ヶ月もあれば、心もすぐに成長するのだろう。
きっとそれが表情や雰囲気にも表れている。そんな気がした。
カーキ色のモッズコートからすらりと伸びた足や、先生の足並みに合わせて上下に揺れる黒いリュックサックが次第に遠くなっていく。
ふわふわとなびく猫っ毛を撫でたあの夜は、やはり夢だったのだろうか。
まだ校正の途中とは言え、一応は新作の原稿を書き終えている。
それでも彼からの連絡は未だになく、携帯電話の着信履歴は仕事関係者の名前ばかりだ。
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