story 26

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「いや‥‥へー、そっか。正直もっとこう、陰気な感じの方を想像してました」 その反応に、思わずくすりと笑ってしまった。 柊谷先生もわたしにつられて、少し気まずそうな笑い声を溢した。 「でも緊張しますよね。めちゃくちゃ格好いいですもんね。次は絶対に紹介してくださいね」 わたしは眉を下げて笑うことしかできなかった。 振り返ることなく、真っ直ぐに歩いていく先生の背中が頭を過った。 一度覚えてしまった先生の体温や匂いが、わたしの心臓を圧倒的な力で締め付ける。 いつまでも待っていても、わたしがどんなに走って追いかけても、もう二度とこの手が届くことはないんじゃないか。 そう思うと勝手に涙が浮かんできて、わたしはすぐに強く瞼を閉じた。
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