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「あっ。それと、スウェット、授業で使うので、すぐ返しにきてくださいね」
「はい、‥‥本当に、本当にすみません」
茜田先生の顔をまともに見ることもできず、ただただペコペコと何度も頭を下げた。
そして逃げるように玄関をくぐり抜ける。
バタン、とドアが閉まる頃には、情けなくて泣き出しそうになってしまった。
もやもやと考えても仕方ないのに、先ほどの失態が頭の中でループする。
それでも会社に戻る頃には、表紙のデザイン案を茜田先生の意向に沿うよう調整することだけを考えるんだ、と何とか持ち直すことができた。
過ぎたことは仕方ない。これから挽回するしかないんだから。
鬱々とした気持ちを振り払うように首を横に振り、それから大きく息を吸って職場へと一歩踏み出した。
どんくさくて失敗もするけれど、仕事は一生懸命、いや完璧にやってみせますから。
どうか呆れないでくださいね、茜田先生。
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