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「マサト!」
学校の正面玄関を出たところで、後ろから声をかけられた。
外は本降りの雨で、さてどうしようかと立ち尽くしていたところだった。
振り返ると、見慣れた顔がこちらに向かって歩いてきている。
圭介の手には一本のビニール傘がぶら下がっていて、内心ラッキーと思った。
「どうだった? 結衣子は」
圭介は卑しい笑みを携えて俺を小突いた。
「結衣子? 誰?」
「いや、俺が紹介してやった女だって。さっきまで会ってたろ?」
鼻先でフルーツ系の香水の香りがして、それから口元のほくろと黒い下着が頭に浮かんだ。
「ああ‥‥」
圭介は、ぱん、と傘を開いた。
俺はすかさずその傘の下に潜り込む。
「何? 微妙だった?」
「うん」
「付き合わねぇの? 結構いい女だと思うけど」
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