第0章甲斐真田学園

1/1
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/271ページ

第0章甲斐真田学園

「飢餓、疾病、これらの多くは貧困ゆえに齎されます。貧困とは資源や資産が公平に行き渡らないことによって起きるのです。貧困ゆえに苦しむ数T百万人にも及ぶ人々がいる一方で有り余る豊かさを享受している人々も存在します。この現象は、生まれた地域、属する国、宗教・思想、人種により生まれた瞬間に固定されてしまい、それを覆すのは容易ではありません。すべての人々が貧困から解き放たれるためには資源、資産を公平に分配することが必要です。ところが豊かさを享受する人々はその豊かさを既得権益として手放そうとしません。さらにそのような人々は権力を持つ側にいるためそれを外から強制的に是正することは容易ではありません。その状態を変革するには常識的な手段では難しいのです。残念なことに非常識な手段で世界を変えようとしたほとんどの勢力はテロリストと悪しざまに罵られ歴史の表舞台から消えてしまいました。」ディスプレイに映し出され持論を滔々と述べている女性は額に手を当てしばし黙考したのちに続けます。「では、このように貧困に苦しむ人々を救おうという行動が報われないのは何故でしょう?先ほどから申し上げているように、豊かな者たちの力は強大です。その力に打ち勝つには戦術的にも戦略的にも上回らなければなりません。そのためには優れた知恵(ずのう)戦力(ちから)が必要です。我々塩川財閥はそれらを得るための方策を模索しました。必要ならば自ら作り上げるしかないと結論付け、開学したのが甲斐真田学園なのです。」 杉山毅は中学2年の時に事故で小脳に損傷を受けましたが、たまたま父親が人工ニューロンプロセッサの培養研究をしていたため、人工ニューロンプロセッサの移植を受け、多少の不便はあるものの日常生活を送ることができるようになり、卒業後は甲斐真田学園に進学できるよう受験勉強に励んでいます。甲斐真田学園は『世界征服』と言う校訓を掲げており、世界のため役立つように広く人材を集めていて、毅のような曰く付きの体質の者でも区別なく入学させてくれると言うのです。
/271ページ

最初のコメントを投稿しよう!