第八話「明かされた事実」

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第八話「明かされた事実」

     1  レイとの初デートから一週間が過ぎ、第三土曜日の十二月十九日。  一花は相手先の指定で、異人館通りにほど近い瀟洒な洋館のホテルに行った。  時間は午前九時と比較的早く、朝食を一緒にとのことだったが、ホテルのレストランに着いて、一花は納得した。  今は毎日、ハンクや容子の用意した栄養バランスの良い朝食を取っている彼女だったが、指定されたホテルの朝食は、そんな一花でも思わずうっとりしてしまうほどに豪華で美味しそうだった。 「このホテルは朝食が評判でね。ぜひ一花と一緒に食べたいと思っていたんだ」  ジェラルドはそう言って、向かいの席で優雅に微笑んだ。  人気のホテルらしく、レストランは宿泊客で賑わっていたが、人並み外れた美貌で異彩を放つ彼に携帯カメラを向けるような無作法者はおらず、密やかに聞こえる談笑の声をBGMに、一花はゆっくり優雅なブランチを楽しむことが出来た。  一花は美味しいパンやフレッシュジュースを堪能しながら、向かいで優美な笑みを見せて自分同様に食事をするジェラルドを見つめ、「ジェラルドは、私達と同じような食事を取るのね」と低い声で言った。     
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