春のとまりを 知る人ぞなき

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そうして歩くこと2分程で公園に咲いている桜が見えてきた。この公園には沢山の桜の他に一本だけ三階建てのアパート位の高さがある彼岸桜が咲き誇っている。それは、この町では少し有名で毎年そこで祭りも行われる。 「えっ……」 その桜の下に一人の少女が立っていた。その子は、僕がこの春から通う高校の制服に身を包んでいた。僕は女友達がその制服を着ているのを見たことがあるが、それよりも遥かに似合っていた。後ろ姿だけでもその美しさがヒシヒシと伝わってくる。そんな彼女は肩の上で揃えた短い髪を揺らしながらヒラヒラと散りゆく桜を見上げていた。 何故だろうその景色に僕は見惚れてしまっていた。小説等で表現されるようなその幻想的なまでに美しい景色に無意識に心を奪われていた。 すると、公園に強い風が吹き付けた。 「きゃっ……!?」 その瞬間に彼女のスカートが桜と共に舞い上がった。 僕はその光景をバッチリと頭に焼き付けた。もちろん彼女ともバッチリ目があった。 「見た?」 彼女は顔を赤らめてこちらを睨み付けた。その顔はとても整っており、少し幼さの残る顔つきで綺麗と言うよりは可愛いという印象だった。 「そ、それなりには……」 なんだその答えはと思った矢先、小さな右手が僕の頬を弾いた。 「最低!」 パチンと言う甲高い音と共にその言葉が耳を掠めた。
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