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あの日から僕の頭の中では何度もあの景色が繰り返し流れている。一つ言っておくと決してスカートの中のことではない。もちろん思い返したこともあるが……。
何故かは分からない。でも、あの日のことを僕はふとした時に思い出していた。
「あんたいつまで横になってるの?今日入学式でしょ?」
僕が起き上がろうとした時、不機嫌そうな顔をした母がドアを開けた。
そんな母を見ることなく「今行くよ」と僕は頭を掻いた。
高校生になって迎えた二度目の春。暖かな日差しがアスファルトを照らし、爽やかな風が桜を舞い上げる。
あの日から一年過ぎ、彼女とはあれ以来一度も会っていない。同じ高校に通っているはずなのに一度も見かけもしない。やっぱり学年が違うのかな。
「お~っす」
そんなことを考えながら歩いていると背中に強い衝撃が走った。
「痛っ!? 陽菜……お前もうちょっと女らしくできたりしないの?」
僕が見上げた先に、一人の女が立っていた。そいつは茶色く染まった髪が春の優しい光を反射させ、ツンツンと尖った癖毛の輪郭を鮮明に映し出し、ベージュのセーターを巻いた腰に手を当て僕を見下していた。
「はぁ? 喧嘩売ってんの?」
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