凍れる刃

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「先に申し上げた通り、失業いたしました。これが元とはいえ尊敬すべき主であれば庇い立ていたしますが、生憎とそのような点が一つも見当たらないものでして。これ以上人様に迷惑をかけてはならないと、恥を忍んで参上つかまつったしだいでございます」  馬鹿に丁寧の物言いをしながらも、執事は苦笑する。それだけで気苦労が滲み出ていた。 「これが少しでも仕事なりに力を注いでいただけていたら、お支えしようと思っておりました。それが、本当の主人の願いでした。ですが実際は仕事もせずに酒を飲み、貴族だと口ばかり。責任を果たさずして何が貴族なのかと呆れながらも、任された町の事を必死で行っておりました」 「では、貴方が町の事を?」 「えぇ。本来の主人に育てられ、支えておりましたので」  有能な執事がありながらこの有様とは、セオドールの無能もここまでくれば清々しい。切り捨てるのに一切の躊躇いもない。 「奴は私兵を三十人ほど連れております。元の家からこちらに移ってくる時に雇い入れた者達で、奴と一緒に好き放題にしていた者です。お急ぎに」 「分かりました」  エリオットはオスカルに後を任せ、外へと飛び出し馬を繰った。  執事の言った通り、そこには屋敷が一つあった。明かりを灯したそこへ向かうエリオットの心は、この空よりもずっと冷たく冴え渡っている。  そうしてドアを開ければ、守りを任されているらしいごろつきが十人ばかり、一斉にエリオットを見ていた。 「なんだお前?」     
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