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駆け込んできたジェイソンに呼ばれ、バタバタしている中でシウスに「一生に一度の事にグズグズするでない! 早う行け!」と二人仲良く叩き出され、とるものもとりあえず王都アベルザード家へと向かった。
屋敷に到着した頃にはもうお産は始まっていて、十数分後には元気な泣き声が聞こえてきた。
自分の事ではないのに、思わず隣のオスカルの手を強く握ってしまった。その上から重なった手も、しっかりと握ってくる。見ればオスカルの瞳はとても頼もしく、そして嬉しそうだった。
産まれたのは元気な女の子。抱かせてもらった腕の中、温かな幼い命を感じて、思わず涙が出てしまった。エリオットの職務上、死者の弔いをすることはあっても新しい命と触れる事はまずないのだ。
隣りにいたオスカルが穏やかに微笑んで、涙腺の緩んだエリオットを抱きしめてくれた。それを見るオスカルの家族もまた、温かな笑みを見せてくれていた。
二人がいるのはウルーラ通りにある一軒の人形店。そのほとんどがぬいぐるみだ。
ぬいぐるみなど幼い子供のおもちゃだと言う者が多いが、今この店はとても繁盛していて、一部は予約待ちとなっている。それというのもこの店は以前カールがデイジーに兎のぬいぐるみを買った、あの店なのだ。
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