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子供みたいにグリーンの兎の手を操ってみせるオスカルに微笑みを浮かべる。こういう時だ、彼の恋人でよかったと思えるのは。
「そういえば、エリオットにも妹さんがいるんだよね? どうしよう、お土産に買っていく?」
目的のぬいぐるみをラッピングしてもらう間、思いだしたようにオスカルが言う。まだ時間もあるからと店内を見て回っている時だった。
「あ……いえ、私の妹はもうそこそこ大人ですし、こうした物にあまり興味はないかと」
「今や大人だってここのぬいぐるみ自慢してるけれどね。でも、女の子は好きじゃないかな? こういうもこもこで柔らかくて愛らしいもの」
そこを言われるとなんとも……。
エリオットは困って苦笑してしまう。嫌いではないだろうが、興味がある物でもないので置きっぱなし、という可能性は大だ。流石にそれはぬいぐるみが可哀想に思える。
「ほら、これから訪ねるのに行くのに二日もかかるんじゃ食べ物は適さないしさ。お土産は持って行きたいよ」
「紅茶を数種買ったので、それで十分ですよ」
「えー、なんか味気ない」
文句を言うオスカルに息をつき、エリオットは考えてしまった。
あの妹が興味のあるものは、分かっている。分かっているだけに隠しておきたい気もするのだが。
「では、明日王都を出る前に立ち寄りましょう」
「間に合うの、それ?」
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