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「はい。早朝に開いていて、かつ丈夫な品を揃えている店を以前ランバートから聞いていますから」
「……下町だね」
訝しむオスカルににっこり笑い、エリオットは出来上がったラッピングを手に店を後にした。
軽い昼食を食べ、お土産のお菓子を持ってアベルザードの家に訪れたのはティータイムの少し前。予定通りの時間だ。
程よい大きさの前庭は、華美な装飾も美しい庭園もない。低い生け垣に、後は心地よい草地があり、野の花がそよぐ。季節柄、前日に薄らと雪が降った草原はしっとりと濡れている。
昔はこの生け垣は全て小さな薔薇だったらしい。だがオスカルの父ラザレスがオスカルを迎えた時に危険だからと全てを移し、怪我をしづらいものに取り替えた。
今も大人が楽しむ裏庭には薔薇の生け垣があると言っていた。
「オスカル、そんなに肩を寄せていてはこりますよ」
「寒いんだもん。今年は雪が遅かったけれど、急激に冷え込んできたよね」
確かに最近になって急に冷え込んだ。まだ根雪とまではならないだろうが、日に日に雪の時間が増えている気もする。
「さっ、早く中に入ろうか」
気を取り直して門を開けたオスカルに招かれ、エリオットは屋敷を目指し歩き出した。
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