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お母さんとの食事会に緊張していたせいか急に力が抜けてうとうとしそうになる。
そのまま高砂さんと特に会話することなくあっという間に家に着いた。
家の前で車を止めてもらい降りる前に高砂さんにお礼を言った。
「ありがとうございました。今日、とても楽しかったです。その上、家まで送って頂いてすいません。」
って私が言うと
「こちらこそ。今日はお疲れさまでした。お陰様で母も見合いの件、あきらめてくれそうです。」
「そ、そうですか。なら、目的達成と言うことで…よ良かったです。」
結局、バレてしまったしどうなることかと思ったけどちょっと一安心できる…かな。
「それじゃあ…」って助手席のドアに手をかけると
「あのっ、」
と、高砂さんに呼び止められた。
「はい?」
ドアから手を離して高砂さんの方を見ると
「いや、その、うちの母ですが、あなたに色々言ってませんでしたか?」
と言いにくそうに高砂さんが聞く。
「色々……ですか?」
ええ、めちゃくちゃ言われましたよ。
なんだかんだと聞かれたし。
とは言えないよね。
「あの人は何でもハッキリと言う人なので…あなたに失礼な事を言っていなければいいのですが…」
心配そうに聞いてくる高砂さん。
「大丈夫ですよ。とても楽しいお母さんで良かったです。高砂さんの手懐け方もバッチリ教えて頂きましたから。」
私がそう言うと
「えっ!!」
と、それまでハンドルを持ったまま前を見ていた高砂さんが私の方に急に振り向いた。
うっ、ち、近い……
「う、嘘ですよ。仮に教えていただいたとしても、私にそんなたいそれた事、出来るわけありませんから…」
それを聞き高砂さんが呟いた。
「なんだ嘘か…。だけど、少し残念ですね。」
私には高砂さんが呟いた言葉の意味が理解できなかった。
「残念?どういう意味ですか?」
「……いや、ひとり言です。気になさらないでください。ただ…一つ言うならもう良一郎とは呼ばないのですね。」
「ええっ。」
な、名前?
りょ、良一郎って……
私がフリーズしているとフフフと不適に笑い
「冗談ですよ。お引き留めして申し訳ないです。それより明日、遅刻しないようにしてください。」
そう言った高砂さんはいつものサイボーグな顔に戻っていた。
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