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てっきり書斎に行くと思ったんだけどなぁ。でも締め切りも終わったところだしまだのんびりしたいのかな。
そんな事を考えながら珈琲を入れて戻ってくると瑞季さんは目を閉じて眠っているようだった。
起こしちゃいけないと思ってそっとカウンターにカップを置くと
「椅子の背もたれからあんたの匂いがする。」
目を閉じたままで瑞希さんが言う。
「えっ…匂い?」
確かにさっきまで私はそこに座っていたけど…。どうしよ…ちゃんとお風呂に入ってるけど変な匂いとかだったら。
焦る私に気づいてないのか瑞希さんはひとり言のように続ける。
「まるで…あんたに背中から抱きしめられてるみたいだな。すげぇ…落ち着くわ。」
確かに私も前に同じような気持ちになった事があるけれど…瑞希さんは私とは違ってなんでもない風に言う。
そんなこと言われた私は今、こんなにもテンパってるのに。
「え、と…」
いよいよどうしたものかと思っていると漸く目を開けた瑞希さんが私を見て言う。
「なぁ…、ここ座れよ。」
「え、こ、ここ?」
ここって…ああそこに座れってこと?
黙って大人しく言われた通り瑞希さんが座る椅子の隣にある丸イスに座ろうとすると…
「じゃなくて。」
と手を引っ張られ瑞季さんの膝の上にストンと乗せられてしまった。
「きゃっ…」
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