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最近、他部署から異動してきた結城佐和子の歳は確か…俺より3つか4つ上だったと思う。
噂ではバツイチらしいけど、真相は誰も知らない。
俺は滅多に慌てるという動作をしたことがない。
けれど、編集長がこの声で呼ぶ時は慌てた素振りで行く事がベストなのだと彼女が異動してきてからの数日間で悟った。
俺はデスクから早急に立ち上がり編集長の元へ。
「どうしました?編集長。」
「高砂、神戸先生、もう恋愛相談はやらないって?」
髪を無造作に後ろで束ねながら言う編集長は美人の類いだ。
ただ、
女を全く感じることがない。
この人なりに、虚勢を張りこうして、第一線でやっていくために身に付けた術なのだろうと思う。
「ええ、先生に何度かお話はしてみたのですが今後は新作に向けて執筆に専念したいと仰ってまして取材も最近では中々、お受けにならなくて。」
と、事実をそのまま伝えると
「高砂っ、あんた何年編集やってんの?ノーをイエスに変えるのが編集者としてのいろはのいだろが!もう一回行ってきなっ。」
正直、俺は編集長が苦手だ。
根本的に馬が合わないと思う。
基本的に俺はいつだって主導権を握りたいほうだ。
仕事も恋愛も自分が主導で進めていきたいと思う。
だから、こうして、常に上から言われるのはいくら、仕事上であっても実にーーー
面白くない。
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