SIDE 瑞希

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って俺、何で叶の事、抱きしめてんだよぉー!! 叶、完全にフリーズしてるじゃん! これじゃ何とかするどころか、もうめちゃくちゃじゃねぇかよ。 くそっ、小説のようにはいかねぇな。 どうすりゃいいんだよ。 と思いながらも叶を抱きしめる。 叶の体温が俺に直に伝わってくる。 叶の髪から甘く柔らかい匂いがして俺の鼻先をくすぐる。 俺はじっと叶を抱きしめているうちに漸く冷静になってきた。 気持ちが落ち着いてきた。 寧ろ、普段よりもずっと気持ちが穏やかだ。何でだろ。 叶を抱きしめていると心がとても落ち着く。 「叶…?」 俺が呼ぶと俺の腕の中でじっとしていた叶が見上げる な、なんだよ。 目とか潤ませるんじゃねぇって。 だけど俺は出来るだけ優しく言った。 「意地悪な事言って…悪かったな。」 いつもの自分を取り戻した俺は素直に詫びると名残惜しさを覚えつつも漸く叶を解放した。 すると、ゆでダコみたいに真っ赤になった叶が息も絶え絶えに言った。 「しょ、小説のネタ…ですよね?」 困り顔の叶が俺に聞く。 一瞬、躊躇ったものの俺はにっこり笑うと 「あぁ、お陰で良いのが書けそうだ。ありがとな。」 そう答えた。 何故かその時、少し胸が痛んだ気がした。 俺は書斎には戻らず、やっぱり煙草を吸いに二階へと上がった。
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