SS編集者、高砂良一郎のひとり言

6/7
593人が本棚に入れています
本棚に追加
/296ページ
一瞬、引き返そうかと思ったけれどそれもわざとらしい気がする。 俺は取り合えず自販機で缶珈琲を買うと、電気をつけることもせず薄明かりの中、一番入り口近くの椅子に静かに腰を下ろした。 「高、砂……?」 「お疲れ様です。帰社しました。少し前ですが。」 顔を合わせずに言う。 「そ、そう……ご苦労様ね。じゃ、私、先に行くわ。」 さり気なく目元を手で拭いながら編集長が立ち上がった。 やはり泣いてたか… いつものハスキーな声が今は涙声で調子が狂う。 なんでか分からなかった。 何がしたいのか自分でもよく、分からなかった。 俺は椅子から立ち上がると編集長を引き寄せ抱き締めていた。
/296ページ

最初のコメントを投稿しよう!