第6章

31/56

286人が本棚に入れています
本棚に追加
/701ページ
 互いに話をしながら、喉がカラカラになっていた。  望美も、キッと喉の渇きがあるのだろう。    仁科が「アイスコーヒー又、又頼むけど、北村もそうしようね」  頷き、顔を見合わせ、同じ事を考えていたのか?笑ってしまった。  追加のアイスコーヒーがテーブルに置かれた。  「さっきの質問は父の仕事はと言う事よね? 病院や介護施設など経営してるのよ。 そうとは知らずバイト先が父が経営している病院には、私もビックリしたわ」  あまりの衝撃的な言葉に、暫く仁科は言葉が出てこなかった。  目が点になり、口元は開き望美を見つめるには、程遠い視界を見つめていた。  「仁科君、如何したの? なんか私の話に気にかかる事があるの?」    それでも口元を見ると、何か喋りたそうであった。  テーブルに置かれた僅かなコップの水を口に運んで、ため息混じりなのか、一呼吸しているのか、仁科の様子が分からずに、ジ:ーと見つめた。  数分間の間の取り方が不自然だと気付いたのだろう…  「北村! 僕は正直想像してなかった事を聞かされて、何と言っていいのか? あまりに…」  ようやく話しが出来るようになったことで、望美は安心した。  「あ、ま、り、に? あまりにもなに? 正直に言わないと分からないんじゃない?」  その通りだと、コクンと頷き、重い口を開いて話をし始めた。  「あまりに、北村のお父さんの存在が大きすぎるよ。 北村のバイト先は、羽鳥総合病院だったね。 日本でも有名な医学会の重鎮で、羽鳥健太郎様だよね。 た、し、か、 日本医学会連合の理事と聞いている。 来年、役員改正で副会長に名が選出されるのでは無いかと話題になっているんだ。 その人なんだよね! まさか、北村のお父さんだなんて!」  普段は冷静で物怖じしない仁科の慌てふためいている姿や言葉を いぶかしそうに見ていた。        
/701ページ

最初のコメントを投稿しよう!

286人が本棚に入れています
本棚に追加