プロローグ

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 何時もの時間に起こしてくれる目覚まし。  スマホに設定した目覚ましで起きられたらどんなに良いか!  母ひろ子によって起こされる。 きっと遅刻しない為に起こしてくれるのだろう。  甘えてる事を自分自身自覚はしている。  6畳の畳に規格通りのサッシの窓に取り付けた白のカ―テンから、眩いばかりの陽が入る。  背伸びして両手を上げて背筋を伸ばすと縮こまった体が生き活きしてくる感じ。  今では珍しくない未婚て生まれた私の名は望美。  名前の如く母が望んで産んだ名前。  珍しく無い母の苗字からついた北村。  自分的には語呂合わせが気にいってる。  叔母孝子は良く言う言葉。  「ノンちゃん、父親似だね」  写真さえ無く記憶さえ無い父似と言われても、幼い自分はどのように答えて良いのか。  そんな孝子の居酒屋で夕方から母は深夜迄働き詰めであった。  幼い時からアパ―トでひとりにして置いていけない。  居酒屋のカウンターの片隅に足が床につけない丸椅子に座ってお絵かきや好きな本を夢中になり空想の世界にい たと言う。   お客から可愛がられ、お菓子や時には可愛いと言われ、お小遣いをくれた人も中にはいた。  そんな記憶が 今でもある。  アパ―トから自転車の後ろに乗り、両腕の隙間から 見える風景は優しい道並みの四季を楽しませてくれた。  そんなひろ子に連れられて通った保育園では広い園庭で遊具を自由に遊べる。  通園を楽しみに出来る理由はそこにある様な子ども心に思っていた。  今考えてみると簡単な理由なのだと。  思い出すと笑ってしまう。  いつも寝付くまで本を読んでもらい、安心しながら寝た事を覚えている。  しかし、一度読んでもらうと次には、昨日読んでもらった事を確実に覚えていた。  手取り足取りされて文字を覚えた訳では無い。  何故か人より早く文字を覚える様になっていた。  本はその当時から自分にとって大切な友達だったのだろう    
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