第1章

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 っていったら、みんなはちょっと見合って、ちょっと笑った。  笑いながらちえ美さんが、あたしの手におかしをのせた。  「あ、げ、る。ねえ静江ちゃん、今度その人紹介してよ。こないだちらっとフードの中が見えたら、ものっそカッコよかったんすけど。年もずいぶん若いみたいだし。かなり王子度高かった」  そしたらみんな一度にわいわいしゃべりだした。  「若いの? ここじゃ、若いってだけで十分貴重!」  「あたし明日、絶対顔見る見る見る」  「期待しないほうがいいよ、『夜目遠目笠の内』かも」  「なにそれ?」  「よく見えないシチュエーションだと、きれいに見えるっていう意味」  「あんた、おばあちゃん?」  「は?」  「なんちゃらいう国会議員の紹介だよね」  「ねえ、あんたたち、うすうす思ってたけどさあ」  「ルリ子に聞いたらわかるんじゃない? 議員さんの跡取り息子だったりして」  「えー、親が紹介するう?」  「いや、外で変なのに引っかかるより、って感じだよ、きっと」  「ちょと、聞いてんの?」  「はい、半分こ」  あたしはちえ美さんからもらったおかしを、眞知子さんにあげた。  「……ありがと、静江ちゃん」  あたしのぶんをぱくっと一口で食べて、あたしはもぐもぐしながらいった。  「なら、いっときます。でも、あの人はプロの変態ですよ」  「プロって」  みんなは笑って、それからあたしにずりずりよってきた。  「どんな系? 何、けっこうハードなの?」  「痛いのと汚いのはヤだな、M男なら大歓迎だけどさ」  「マンガの俺様キャラはいいんだけど、現実のおらおら男は最悪だもんねえ」  「だよねー」  あたしはまた指を口にあてて考えた。  「えっと、あの人、あたしとはコスプレごっこであそぶだけで、エッチはぜんぜんしないの。服とかかつらとか(どう)ぐとか、ぜんぶあの人が持ってきて、さいきんのせっ定は、女子高の先生と生とで、あたしが先生なんだけど、先生ってどういうふうにするんだか、あたしぜんぜんわかんなくて……それに、ほんとは男の人のが好きなんだって」  「そうなんだー」  口をそろえて、みんなはソファにもどった。  「あーあ、このごろ、いい男はみんなゲイなんだよなー」  ちえ美さんがため息をついたら、たまゑさんが笑いながらせ中をたたいた。
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