青いバラ → 赤いバラ

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青いバラ → 赤いバラ

「あら、こんな色のバラなんて初めて見たわ」 「珍しいでしょう? リクエストがあったから入荷したんです、青いバラ。お客さんも、どうですか?」 「こんな洒落てるもの、爺さんの病室におこうもんなら怒られちゃうよ。ひまわりをくれるかしら?」  うちは長年、商店街の一番端っこで花屋をやっている。  数年前、ここのすぐ近くに総合病院が出来た。そのおかげで、お見舞いに花を買っていくお客さんがどっと増えた。店内は不吉だと言われる百合やら鉢植えやら規模を縮小して、入荷を担当している父は、明るくて思わず元気が出そうな色の花の入荷をどんどん増やしていった。そのおかげで売れ行き好調である。病院バブルはそれだけじゃなく、人手も父や母だけでは足りなくなってしまって……ついに、暇を持て余していた私も駆り出される始末となった。こればっかりは想定外で、大学に行くか寝るか友達と遊びに行くか、だらだらと過ごしている私の生活パターンに大きな痛手を与えたのである。     
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