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「……はあ」
大量購入を目論んだ私はするっと肩透かしをくらう。しかし、その笑顔はとても満足げで……私はその笑顔を途切れさせないように大慌てで花をラッピングした。
「なんだ、お前が店に付いてた時の売り上げ、バラだけか」
閉店時間となり、私はお店のシャッターを閉める。店内に並んでいる花をすべてショーウィンドウの中に仕舞っていると、レジをしめている父がそう呟いた。
「しかも三本とは……中々やるお客さんだな」
「どういうこと?」
「なんだ、お前花屋の子どもなくせして何にも知らないんだな」
「別に、花屋やるために生まれてきたわけじゃないし。それで、どういうことなの?」
「バラは、本数で花言葉が変わるんだよ」
「本数で?」
「そう。三本のバラの花言葉は『愛してる』、十一本で『最愛』、百八本で『私と結婚しでください』。本当は母さんと結婚するときに百八本のバラをプレゼントしたかったんだけど、『荷物になるから嫌』って断られてな……」
「いや、そういう話いいから」
しかし、花屋の子どもとして生まれてきたのに……本数が変わるだけで花言葉が変わる花があるなんて初めて知った。私が神妙に頷いていると、お父さんはレジの裏から一冊の本を取りだす。
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