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中学では合唱部に入部し、ますます歌にのめり込み、合唱で有名な高校に入りたいと思うようになった。そして、志望校に見事合格して念願の合唱部に入部出来た。
ところが困った事に夏の合宿が施設の花火の日と重なってしまい、顧問の先生に相談する事にした。先生はとても優しくて、親がいない僕に目をかけてくれ、残って個人教授をしてくれる事もあった。まさか死んだ母に会う日だとは言えないと思ったが、不意にこの先生なら分かってくれるかもしれないと思い、僕はお母さんに会った事を話し始めた。
先生は僕の話を聞いている内に、顔面蒼白になり震える声で
「もしかして君のお母さんの名前は忍さん?」
「どうして母の名前を?」
「ああ、信じられない。まさか僕に息子がいたなんて…佐藤っていう苗字は多いし気にも止めてなかったが、不思議と君の事が気になって仕方がなかった」
「僕のお父さんなの?でも、お父さんはお母さんを捨てて出て行ったんでしょう?」
「私といても幸せにはなれないと思って出て行ったんだが、歌手は諦め教師になって生活も安定したので、忍を必死で探したが見つける事は出来なかった。お母さんの事はずっと愛していて他の人との結婚は考えられず今でも独身だ。今まで苦労させて本当に申し訳ない。これからはずっと一緒にいよう」
僕は幼児のように、泣きじゃくりながらお父さんの胸に飛び込んだ。
そして迎えた花火の日、お母さんは泣き笑いの笑顔で僕の目の前に現れ
「お母さんはこれで安心して天国に行けるわ。お父さんといつまでも仲良く幸せにね」
「お母さん、もう会えないなんて嫌だよ」
「天国からいつも見守っているからね」
線香花火の玉と僕の涙が同時に落ち、
お母さんは天へ昇って行った。
終
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