記憶の目

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子供の頃、何度も青い風が私の体を吹き抜けて行った。 晴れた日に、自転車に乗って長い橋を渡っていると、近くの海と繋がっている大きな川から、気持ちのいい風が吹いて来た。 微かな潮の香と川沿いに茂っていた緑の草木の匂いとが混ざった少し強めに吹く風だった。 私には、青い空、川の先に広がる青い海、青々と茂った草木、橋の上を行き交う車が見えた。体には感じるが、風は見えなかった。 あれから何十年も経ってしまった今、あの頃の風にもう一度吹かれたい。 記憶の目にしか見えない青い風。
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