第2章

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 板張りのリビングには四十インチの平面テレビが低いガラス台の上に置いてあり、その前にボックスから出したばかりらしい梱包用の発砲スチロールとDVDプレーヤーが置いてあった。  彼女がプレーヤーの説明書を黙ってこちらの眼の前に突き出したので、僕も無言でそれを受け取り、プレーヤーの傍の床に腰を下ろした。  本当は説明書なんか見なくたってDVDプレーヤーのテレビへの繋ぎ方ぐらいわかる。その為にちゃんとメーカーではコードのプラグの色を変えているのだから。しかし一応礼儀かと考えて、説明書の接続方法のページを読んでみた。  テレビ画面をDVDにセットして、プレーヤーのリモコンに備え付けの電池を入れて試してみると、プレーヤーはちゃんとオンした。  それにしても、彼女がDVDを借りにレンタル・ショップに現われたのはもう二週間以上も前のことだ。あの時はプレーヤーを持っていなかったということだろうか。  隣に突っ立ったままこちらの様子を伺っていた奈々子に僕がリモコンを手渡すと、にんまりとした微笑が返ってきた。彼女はこの前と同じく超ミニなショートパンツ姿で、僕の隣にあぐらをかいて腰を下ろすとリモコンを点けたり消したりした。 「DVD持っているなら、入れて試してみたら?」  僕がそう促すと、奈々子は上体を伸ばしてコーヒー・テーブルに投げ出してあったバッグの中からDVDを取り出し、僕に手渡した。うちのレンタル・ショップのやつで、まさに例のテレビドラマの第五巻だ。  いつ借りに来たのだろうかと考えあぐねながら、僕はDVDをプレーヤーに入れてリモコンのボタンを押した。うまく画面が出たので、彼女に一応尋ねてみる。 「このDVD、この前借りに来たよね?」 「そうよ。この前はなかったじゃない」 「で、この前はプレーヤーがテレビに繋がっていなかった、ということ?」  僕の質問に、奈々子はばかなことを訊かないでと言いたそうな顔をした。 「あの時はまだプレーヤーを持っていなかったもの。これ、さっき届けてもらったの。見たいDVDがないのにプレーヤー買ったって仕方ないでしょう?」  そういう考え方もあるか、と一応納得する。
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