第2章

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 目ざわりだから、どこかよその店にDVDを借りに行くかネットでダウンロードして観て欲しいぐらいだ。  それにしても、奈々子は平日の真昼間からレンタル・ショップにやって来る。学生とか勤め人ではなさそうだ。プレーヤーを繋いでくれる男手もいないということは、一人住まいなのだろうか。  彼女はいつも超ミニとかお尻が見えそうなショートパンツで店を訪れる。僕と決して視線を合わそうとしない彼女が棚から棚へと長い脚を露わにして歩き廻るのを盗み見ながら、いったい挑発するためにあんな格好をして店に顔を出すのだろうか、と変に意識してしまう。そして、そんな自意識過剰に陥る自分に実はうんざりしはじめていた。  その日はカウンターにいたところ、順番待ちをしていた奈々子が偶然にも僕のレジにやって来た。  カウンターに突き出されたのは例のテレビドラマの第五巻だ。なんでこの前借りたやつをまた借りる必要があるのかといぶかりながらレジを打っている僕の耳に、彼女の不愉快そうな声が届いた。 「これ、ずっと貸し出し中だったわ」  僕は伝票を打ち出しながら、彼女と眼を合わせずに慇懃無礼に答える。 「ご希望があれば予約を受け付けますけれど」 「敦さん、このドラマ見た?」  いきなり名前を呼ばれて僕は少しうろたえた。隣でレジを打っている斉藤さんにでも聞かれると具合が悪い。斉藤さんは四十に手が届く独身女性で、いつも人の噂話に余念がないからだ。 「最初の方は見ましたけれど・・」  DVDと伝票を店の袋に入れて手渡しながらそう白状すると、彼女がカウンターに身を乗り出して耳打ちした。 「じゃ、後で一緒に最終回を見ようよ」  となりの斉藤さんの耳が尖ったのを気配で感じた。客と私語を交わすなんて規則違反だ。  いや、そんな規則はないとしても不都合には違いない。それに、奈々子の派手な容姿はただでさえ人目を引く。この店に来ている男達が皆彼女の一挙一動に注目したとしても僕は驚かないだろう。  僕はうんともすんとも答えなかったが、ちらりと奈々子の顔を見た。そして、失敗したと感じた。  なぜなら、その時彼女はいとも女の子らしい顔でこちらを見つめていたからだ。彼女は片手を耳の傍で、バイバイ、というふうにひらひらさせると意気揚々と店を出て行った。
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