第2章

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「やめようよ、そういうの。隣同士なんだからさ、本音で付き合おう。友達付き合い、ってことだけどね。お隣さんにまで体裁つくろうのって、すごくかったるいじゃない? そういう疲れることは、やめにしよう」  どうして彼女と隣人付き合いしなきゃいけないのか、と疑問がないわけではなかったけれど、一応僕も笑ってみせた。  友達、という注意書きがつく限り、取り合えず、へたなことに巻き込まれる心配はなさそうだし、笑ってさえいれば可愛い子だから、彼女を眺めているのは不愉快ではない。いや、本当のところは友達にするには綺麗過ぎる。  そう気づいて僕は思わず眼を逸らして煎餅に手を伸ばした。 「君は、いったい何しているの? 学生、じゃないみたいだよね」  尋ねると、奈々子は軽く鼻を鳴らした。 「仕事よ。夜間勤務もある不定期な仕事。でも当てようなんて考えないでね。当たりっこないから」  航空会社のキャビン・アテンダントかなと思ったけれど、それは不定期とは言わないだろうし、モデルかなとも想像したが、夜間勤務というのは妙だ。 「あのさ、敦君、友達っていうのはへたな詮索をしないものじゃないの?」 「僕は何も詮索なんてしていないぜ」 「でも顔に書いてあるよ。あいつの仕事は何だろう、って今考えているところだって」  思わず奈々子の言葉に笑った。つられて笑っている彼女の笑顔が眩しい。こんな笑顔を見せられたら、きっとどんな男でもなびくのではないかと想像される。  ひょっとして夜間勤務っていうのは夜のお仕事という意味だろうかと頭の隅でちらりと考え、いや、それにしてはいやに純粋な笑顔を持つ子だと考え直した。  ドアを引っかくような音に奈々子は立ち上がり、ベッドルームのドアを開けると白い猫が飛び出して来た。ちらりと見ただけだけれど、ベッドルームにはキングサイズの巨大なベッドが置いてあった。 (第3章に続く)
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