0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
夏の日
橙灯して落つる夕陽
低空する蝙蝠に
咲き乱れる夏の香
吹き渡る乾いた風
喧しい程に
生命を掻き鳴らす蝉時雨
空を染め抜く夕焼け
染まって焦がす歩道
物悲しさより温かさを
過ぎ去った幼少を
飴玉のように転がしては
余韻に浸る
揺れる草花
潜む野良猫
置き忘れた約束を
真綿の雲に溶かして
あの日の声は
彩を失くす
跳ねた蛙
誰かの元に帰る畦道
寂れた公園
軋む遊具
目隠し鬼で
忘れられた子供の影
夕立に烟る街灯
黙る蝉
雨の匂いと鳴る風鈴
帰り損ねた幼き日
摩耗した心の中で
切られたシャッター
昔よりも近くなった空
情景写すレンズ
忘れないように
刻むように
目を伏せた
夏の日
夕暮れ
最初のコメントを投稿しよう!