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椅子から腰を上げ、ドアを開ける。
そこには、執事服に身を包んだ冬河が立っていた。
いつ見ても背筋は曲がっていなく、微笑むことは殆どないほどの無表情だ。
「では、ご案内いたします」
年下の奏に向かい、忠誠的な態度を崩すことなく接しられる。
…四歳しか離れてないのに。
冬河は、年老いた執事でもなく大人の色気を放つ執事でもなく、奏の四つ上の執事だった。
二十一歳で、まだまだ若さがあるというのに遊ぶこともなくずっと屋敷にいる。
「今日のご飯なに?」
「…説明するのは面倒臭いのですが……ローストビーフとサラダとなっております。奏様が望むならスープもおつけしますが、いかがいたしますか」
……奏が一番嫌いなのは、奏を小馬鹿にするような口調だ。
執事というのは、ご主人様に従うっちゅーもんじゃないのかよ……と奏は思うが、それを口に出したところで屁理屈を言われるだけなので、仕方なくその言葉はぐっと抑える。
「お腹空いてるからスープも飲む」
「かしこまりました」
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