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一度も奏の顔を見ることもなく、リビングへ着く。
「どうぞ」
広いダイニングテーブルに一つだけある椅子を、冬河がひいて奏に座るように誘導する。
毎日のようにこれをしているので、奏も特に気にすることなく座り、奏が座る直前に冬河が少しだけ椅子を前に押す。
「こちらです」
奏が座ったところで、目の前に丁寧に盛り付けされたサラダが置かれる。
サラダを置いた後、膝に白いナプキンをかけられ料理に手をつける。
「いただきます」
「はい」
「……おいしい」
「それは良かったです」
おいしいと言っても、少し口角を上げる程度だ。冬河が愛想笑いをすることなんて来客があるときか、面倒ごとに巻き込まれたときかどっちか。
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