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途端に、焼け付くような痛さが腕の端々まで走る。俺の腕に文字が焼き付いていた。彫られたような、焼かれたような、決して消えることのない文字列。
「な、何すんだよ!」
俺は無意識に芳野を突き飛ばした。彼女はそれでも薄ら笑って、
「目が覚めても消えていなかったら、信じてくれる? 信じるしかないよね? 凌」
青の混じった目が、ギラリと光った。
意味が分からん。
俺が何をしたと言うんだ。
“干渉者”って、何だ。“裏の世界”“レグル”……理解、不能、だ。
………‥‥‥・・・・・━━━━━■□
教室の冷たい床に仰向けに倒れている自分に気付く。
深呼吸。ゆっくり目を開け、絶句する。
芳野の顔が、真ん前にあった。
覆い被さるようにして、芳野が俺の顔を覗き込んでいる。
「腕、見て」
ニヤリと彼女は笑い、机や椅子をすり抜けるようにしてそのままゆっくりと後ろに退いた。
腕。
言われて、仰向けのまま恐る恐る右腕を上げる。
「まくって」
「ま、くる?」
「早く」
寝転んだ俺に窓の影が被さっていた。
逆光に目をくらませながら、ゆっくりと彼女の指示通り腕をまくる。
「夢じゃない証拠、見えた?」
彼女の顔は、暗くてよく見えなかった。
「“我は干渉者なり”と書いたのよ。これでもう、あなたは逃れられない」
腕にくっきりと浮かんだ黒い文字は、俺を絶望の底へと突き落とした。
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