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授業をそつなくこなし、放課後を迎える。
偶々その日は補習があり、俺も参加した。
面倒だった勉強も、あの戦いに比べたらなんてことはない。寧ろ、こうして静かに時間を過ごせることが、どんなに幸せか噛みしめる。
壊された校舎、穴の空いたグラウンド。あんなものを見せつけられたら、この平和が如何に素晴らしいか。
久しぶりに味わう日常。
それももうすぐ終わる。
そのまま帰ろうか。思ったが、少し考えた。
あの日、美桜に声をかけられたのは補習のあとだった。忘れ物を取りに教室に戻った俺に、彼女は声をかけたんだ。
一度、戻ってみるか。
2-Cの教室へ。
廊下を辿り、見慣れた教室に入る。
夕日が差し込み、窓枠の長い影が机の上に伸びていた。整然と並んだ机の間をゆっくりと進む。俺の席の前に、美桜の席がある。
何度も彼女は振り向いて、俺を見ていた。プリントを渡すとき、授業中の干渉を促すとき、俺を睨み付けるとき。
人を寄せ付けぬためか、何故か眼鏡をしていたんだ。青っぽい目を見られたくなかったのだろうか、なんて、今は思う。あの綺麗な目を、もしかしたら彼女はコンプレックスに感じていたのかもしれない。
「召喚、か」
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