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「この世界と“レグルノーラ”を行き来できる、数少ない人間。二つの世界に干渉し、問題を解決することができる力を持つ選ばれた人間。“干渉者”あるいは、“悪魔を打ち砕く者”」
ぶれることのない視線は、発言に真実みを帯びさせる。が、にわかに信じ難い言葉を、俺はどこまで飲み込めばいいのか。
冷や汗がアゴを伝い、ポトリと落ちた。気が付けば、全身に嫌な汗をかいている。
まさか、この病的美少女の言葉を俺は信じてしまっていたのか。馬鹿か。
俺がそう思ったのと同時に、芳野は俺の胸ぐらから手を離しフフと笑った。
「信じる信じないは、あなた次第。……一度、私とともに“レグルノーラ”へ飛んでみれば、全てが分かるはず」
「ば、馬鹿言うなよ。芳野さん、ね、いい加減にしようよ」
「いい加減? 果たしてそうかしら。全身からあふれ出す“干渉者”の臭いはごまかせない。私の思い違いだとでも?」
に、臭い?
俺は焦って自分の腋の臭いを嗅ごうと、肩をすぼませた。汗……臭い。変な臭いは確かにするが。
「そういう意味じゃない。わかっているのでしょう」
今度は強引に、左手を俺の右手に絡ませてきた。細くて白いすべすべの手のひらが、俺の無骨な手と重なった。柔らかい胸が制服越しに密着してくる。芳野の、さらさらした髪の毛が顔の真下まで迫っていた。
な、何コレ。何の冗談。
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