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俺はそこで目を瞑るべきではなかった。
どうにかして逃れて、その場から立ち去るべきだった。
俺の意識は、彼女の言う通り“レグルノーラ”に召喚されたのだ。世界の終わりを形にしたような、……灰色の世界に。
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突然のことで理解に苦しみ、腰を抜かして尻餅をついた俺に、芳野は言った。
「どう、少しは信じた?」
初めての召喚で彼女が俺に見せたのは、ビルの屋上からの景色だった。
東京、……じゃない。少なくとも日本じゃない。それはすぐに分かった。
天に向かって真っすぐに伸びたビル群と、その隙間に点在する背の小さい建物は、洋画でよく見るヨーロッパやアメリカの街並みに近かった。日本ではほとんど見ることのない煉瓦造りの建物が多く軒を連ねていた。教会らしき建物や石造りの橋がある一方で、ビルとビルの間を抜けるように張り巡らされた高速道路があったり、全体がねじれたような変なデザインのビルがぽんぽん建っていたりする。
道を走る車には車輪がなく、ビルの合間を小さな飛行機か羽の生えたバイクのような乗り物がブンブン行き交っていた。
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