87人が本棚に入れています
本棚に追加
どんよりした空を見上げれば、雲の切れ間から翼竜が現れ視界を横切っていく。
「都市を囲う森は魔物の巣窟よ。だけど、砂漠の侵食を防いでくれる生命線でもある。レグルノーラの人間は、この狭い世界の中で、魔物と砂漠の侵食、そして悪魔に怯えて生きている。それを救うことができるのは、表の世界とこの世界を行き来することのできる“干渉者”だけ」
俺の狼狽を余所に、芳野はどこか遠くを見つめながら、一言一言噛みしめるようにそう話した。
冷たい風の感触も、尻から伝わるコンクリの感触も、手を付いたときのざらざら感も、確かに作り物とは思えない。それでも本当に“裏の世界”とやらに来てしまったのかどうか、俺はまだ半信半疑でいた。
「何度か、来たことがあるはずよ」
「はぁ?」
芳野はまた、おかしなことを言い出す。
「“夢”を介して何度か来ているはず。あなたは無意識のうちにここへ来た。私はそれを知って、あなたに声をかけたというわけ」
夢……、身もフタもない。第一、寝ている間に見る夢を、どれくらいの人間が覚えているというのか。
今見ているこの光景だって、夢の中のそれに違いない。朝起きて、アレは夢だったと何となく覚えているがはっきりとした感覚じゃない、あの状態なのでは。
「“夢”じゃない証拠が欲しい?」
最初のコメントを投稿しよう!