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見張り番をしている少女は今日で十四回の誕生日を迎えた。
物心ついたときからこの仕事一筋なので誕生日など気に留めていない。
同い年や周りの大人から祝いのことばを言われてもピンとこなかった。
なぜならここは海の上にある鉄格子に囲まれた牢獄なのだから、闇しかない場所でうれしいやたのしいといった気持ちを持ったことがない。
とはいえ世間的にいえば思春期を迎える年ごろ。
薄汚れたガラスに自分の姿が映ると無意識に髪や服に乱れがないから確認している。
生まれつき癖毛なクリーム色の髪を整える。
淡い水色のワンピースは皴だらけ。
透けたピンクの羽織が肩からずれ落ちていたので黒い爪紅を塗った手で戻す。
その手には手提げランプ、もう片方には防犯用の斧を持っている。
足元は裸足である。
これが少女の仕事着だ。
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