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通り道のガラスから離れ、目と鼻の先にある持ち場に立つ。
少女の仕事は外からやってくる罪人たちの受け入れと脱走者がいないか見張ること。
そして釈放された罪人を見送ることだ。
今日も嫌々捕まった様子の罪人を橋渡しから受け取る。
「一名の受け取りを確認しました」
抑揚なく、決められたことばを話す。
すると顔見知りの橋渡しからこんなことを言われた。
「お嬢ちゃんも若いのに大変だね。ほんとうは同い年の子と遊びたいだろうに」
「わたしにはこれしかないので」
彼のようなことは今までも言われたことがあった。
そのたびに〝生きること〟以外に何が必要なのかと思ってしまう。
ここは地獄だ。
衛生面は最悪だし、常日頃から暴力行為はあるし、四六時中どこからか叫び声や喧嘩の声が響き渡るし、心が休まるところなんてない。
生きていることが奇跡のようなところなのだ。
橋渡しの男の眉がかなしそうに曲がったのを見届け、少女は罪人を牢獄へと連れていく。
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