先生の誕生日。

4/18
前へ
/217ページ
次へ
えっ……?  その時、以前先生が私に話してくれたことを思い出した。 じゃあ、あの奥さんが倒れた日は、先生の誕生日だったの? 『涼花ちゃんは、どこまで聞いている?』 「誕生日のことは、話してもらえませんでしたが 奥さんとの事情は、全て話して下さいました」 『そうか……涼花ちゃんに話したか。 まぁ、付き合っているのだから当然かもな。 藤崎はさ、未だに彼女を死なせた原因は、自分だと 思っていて誕生日が大嫌いになっててさ。 誕生日の話をされるのを酷く嫌うんだ。 そりゃあさ~沙織ちゃんの命日に自分の誕生日を 祝われても嬉しくない気持ちは、分かるけどさ~』 私は、その言葉を聞いて胸が酷く痛んだ。 それは……辛すぎる。 先生に、そんな辛い誕生日をもう二度と 味あわせたくないが、ならどうしたらいいのだろうか? そう考え込んでいると睦月君が慌てたように 私の服をグイグイと引っ張ってきた。 「どうしたの?睦月君……?」 不思議そうに尋ねようとしたらゾクッと背筋が凍った。 何?この殺気……? 恐る恐るその方向を見ると先生が凄い怖い表情で 腕を組みながら立っていた。 明らかに怒っているのが分かるぐらいにだ。 ビクッと身体が震えた。 どうしよう……話を聞かれちゃった!? 『もしもし?涼花ちゃん?』 浜野さんが呼んでいるが、それ所ではなかった。 先生は、怖い表情のまま無言で私に近づいてくる。 するとスマホを強引に取り上げられ電話を切られた。 あぁっ!?消しちゃった!! 消した後……ポイッと私に向かって放り投げられた。 慌てて受け取ると先生は、ギロッと睨み付けてきた。 「俺の誕生日が何だって?」 いつも以上に低い声で質問される。 うっ……答えられずに私は、黙りこんだ。 沈黙な空気が流れた。怖い……凄く。 「お前……誰の断りもなく勝手に 人の誕生日を探っているんだ?」 「それは……」 どう言い訳したらいいか分からず黙りこんだ。
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!

504人が本棚に入れています
本棚に追加